シナリオ別にクラウドの課題を解決
課題克服のための準備と計画
しかし、どのような変革にも課題は付きものです。最近の Techstrong の調査 から、複数のクラウドプロバイダーの採用を促すさまざまな課題があることがわかりました。たとえば、コストパフォーマンスやインフラのオープン性を実現しつつ、複雑さを克服するといった課題です。世界中のクラウド担当チームと連携してきた Akamai の経験から、課題のほとんどは 2 つのカテゴリーに分類されます。それは(1)クラウドサービスへの移行、(2)既存のクラウドサービスの消費の最適化です。また、クラウド担当チームはさまざまな制約やプロジェクトの下で活動しているため、1 つの組織が両方の課題を抱えていることも珍しくありません。このような課題を克服するためには、準備と計画が不可欠です。
一般的なクラウドシナリオのベストプラクティス
この取り組みには、Forrester の最近のレポートが役立つかもしれません。Forrester 社の「Tackle Your Cloud Challenges with Forrester’s Scenario Quick Start Cards(Forrester のクイック・スタート・カードでクラウドの課題を解決)」レポートは、一般的なクラウドシナリオに対応するいくつかのベストプラクティスを開始するのに役立ちます(図)。これらのシナリオは、クラウド移行のどの段階にいるかに関係なく、チームが直面する課題の大部分に該当します。
図:クラウドの最新化プロセス
さまざまなシナリオ
クラウドが特定のレベルまで成熟するとよく見られるシナリオがあります。その一例が、クラウドセキュリティです。クラウドのデータとワークロードのセキュリティ確保は、移行の際に最初に直面する課題として一般的です。しかし、レポートには「オンプレミスのセキュリティよりもはるかに複雑で、明確な計画と専用のツールが必要」とあります。エンタープライズの多くは、この点を理解しておらず、オンプレミスと同じアプローチを採用しています。
その結果、セキュリティチームと運用チームには、さまざまなセキュリティワークロードが課せられ、無秩序な増加に繋がります。この負担の重複は、クラウドコストの増大(シナリオ B)、運用面のクラウドへの適応(シナリオ E)、コンプライアンスの達成(シナリオ Q)が、組織が直面するクラウドの課題の上位に繰り返しランクインする主な原因となっています。
各ワークロードの配置場所には複数の選択肢があるため、作業環境に妥協する必要はありません。必要なのは、各ワークロードを 最適 および 最も効率的に実行できる場所を判断することです。また、よくある落とし穴に陥らないように、ワークロードを慎重に吟味する必要もあります。
ワークロードショッピングの定義
ワークロードショッピング(各ワークロードに最適な環境を決定するプロセス)は、アーキテクチャとインフラの計画において重要なステップです。これにより、IT チームは、以前のアーキテクチャで容認されていた効率性に劣るアプローチをデフォルトで使用するのではなく、各コンポーネントに最適なプラットフォームを選択できます。
ワークロードショッピングは、Forrester の新しいクイック・スタート・レポートの次のシナリオを実行する際に特に重要です。
クラウドでワークロードを保護する(シナリオ F) — クラウドコンピューティングとデータリソースの保護には、さまざまなセキュリティ制御機能が必要です。このようなセキュリティ制御機能(ワークロード自体)は、ワークロードが実行されている各エリアに導入することも、エッジの統合レイヤーに導入することもできます。最適なセキュリティアプローチは、すべての制御機能をクラウドに依存しない単一のレイヤーに展開することです。これにより、管理の必要なソリューションの数と種類が減り、SecOps がシンプルになります。また、セキュリティニーズがコンピューティングやストレージから切り離され、ワークロード自体のポータビリティも向上します。このトピックについては、 こちらからお読みいただけます。
エンタープライズアプリケーションをクラウドに移行する(シナリオ H) — クラウド移行に何年もかけているのに、膨大な数のエンタープライズアプリケーションが、高効率なクラウド環境への移行を待っています。このワークロードの実行能力しか評価されなければ、ほぼすべてのクラウドプロバイダーが許容されるでしょう。しかし、レポートで指摘されているように、この新しい環境では「アプリケーションを強化するクラウドネイティブサービス」を考慮する必要があるのです。このサービスには、アプリケーション・セキュリティ・オプション、アクセス制御、ゼロトラスト・ソリューションが含まれます。このようなワークロードの場合、必要な機能が統合された環境によって、さまざまなコンポーネントから独自のソリューションを構築する必要がなくなるため、移行や運用がシンプル化されます。
アプリケーションの最新化に取り組む(シナリオ L) — 最終的には、技術的負債がアプリケーションの最新化にかかるコストを上回り、ROI がこの行動に有利に動きます。作業の大半は、個々のコンポーネントに分割する必要があるモノリシックアーキテクチャに関わるものです。各環境の利益を最大化するため、各コンポーネントワークロードを個別に吟味する必要があることを忘れないでください。多くのチーム、特にアプリケーションの最新化が初めてのチームは、コアとなる Infrastructure-as-a-Service(IaaS)と Platform-as-a-Service(PaaS)を重視する環境を検討します。このような環境により、プライバシー法などの規制の対象となるワークロードの最新化とその後の管理が シンプル になるためです。
クラウドベンダーのロックインを緩和する(シナリオ N) — クラウドコンピューティングの主なメリットの 1 つに、ワークロードのポータビリティが挙がっていました。しかし現実は、その約束を果たせていません。機能を必要とするワークロードがいくつかあるため、単一のプロバイダーに依存しなければならないのです。残りのワークロードは、通常、仮想マシン、コンテナ、ストレージを使用して構築されます。このようなワークロードをポータブル化すれば、リスク管理や、コスト、パフォーマンス、データ主権の要件に応じて、他のクラウドに展開できます。
パブリッククラウドをエッジに拡張する(シナリオ O) — エッジは、低レイテンシーと高可用性という優れた特性を備えているため、コンピューティングロケーションとしての役割が拡大しています。ただし、すべてのワークロードに適しているわけではありません。当然ながら、対象としているのは、メモリや CPU をあまり使用しない分散型ワークロードです。大規模なワークロードは、集約型クラウドに導入する必要があります。2 つのアーキテクチャの限界を理解し、サービスを適切に展開することで、インフラコンポーネントを正しく拡張し、期待されるユーザー体験を提供できるようになります。
始まりとして最適なレポート
クラウド環境に慣れていない場合でも、マルチクラウドに精通している場合でも、クラウドへの移行や運用に関わる一般的な問題の多くを回避するために、慎重なクラウド計画とアーキテクチャ構築を常に優先する必要があります。