©2024 Akamai Technologies
Akamai API Gatewayは完ぺきに機能し、急激なアクセス集中を制御下に置くことができました。大会開催までの時間がない中、Akamaiの手厚い技術支援に助けられ、スムーズに製品選定・機能検証・実装を果たせました
西尾 亮太、株式会社AbemaTV CTO
世界中が注目するサッカー大会、インフラの負荷に懸念
株式会社AbemaTV(以下「AbemaTV」)の運営する「ABEMA」は、テレビのイノベーションを目指し ”新しい未来のテレビ”として展開する動画配信サービスである。登録は不要で、国内唯一の24時間編成のニュース専門チャンネルをはじめ、オリジナルのドラマや恋愛番組、アニメ、スポーツなど多彩なジャンルの約25のチャンネルを24時間365日配信しており、スマートフォンやタブレット、PC、テレビデバイスなどから気軽に視聴できるのが魅力だ。視聴用のABEMAアプリは9,600万ダウンロードを突破(2023年4月現在)、限定コンテンツや追っかけ再生・オンデマンド視聴などが楽しめるプレミアム会員も順調に伸びている。
ABEMAは2022年、世界中が注目する国際的なサッカー大会の放映を決定、すべての試合の生中継を無料で視聴できることになった。日本チームの活躍が期待される大会として開催前から注目度が高く、大会期間中もアプリダウンロード数が約700万増加、1週間の視聴者数(WAU:週間アクティブユーザー)は過去最高となる3,409万に達した。
「非常に人気の高い大会ですから、多くの視聴者が殺到することは明らかです。これまで経験したことのないようなアクセスが発生し、インフラに大きな負荷がかかることも容易に予想できました。もちろん過去のさまざまなデータから数字の目安を推量することは可能です。しかし、特に試合開始前後のアクセス(流入)数は上限が読みにくく、突発的な負荷上昇でサーバーのスケーリングが間に合わなくなる恐れがありました。安定的な配信のためには、CDNによる動画配信インフラのキャパシティ確保はもちろんですが、単位時間あたりのAPIリクエストによる接続数(流入レート)を制御する能力がとりわけ重要になると考えていました」と、AbemaTV CTOの西尾亮太氏は述べる。
アクセス制限のために“仮想待合室”を設ける方法もあるが、構造が複雑になり、今回想定している膨大な秒間接続数には制御の精度が甘く、サーバーにかかる負荷との相関も不確実性が高くなると判断した。
サーバーへ負荷をかけずに高い精度で流量をコントロール
大会中の流入レートを制御するにあたって最大の課題は、ブラウザやアプリがABEMAに接続開始時に発するサーバーへのAPIリクエストを高い精度で流量制御することだった。
プロジェクトの成否を握る流量制御のしくみを自社開発することも検討したが、検討開始から大会開催までの限られた時間で方式を決定し、十分な性能検証まで行う必要もあった。そこでABEMAはAkamai Event Supportを活用し、Akamaiの技術コンサルタントエンジニアの強力な支援を受けながらいくつかの手法を検討・検証し、最終的にAkamai API Gatewayの導入を決定した。
具体的には、視聴クライアントとなるアプリケーションの起動時にリクエストされるAPIの宛先(APIエンドポイント)を Akamai API Gateway とし、API Throttling によって単位時間あたりの流入量の制御を行う。そのうえで、Akamai API Gateway から事前定義された正常であることを示すAPIレスポンスが得られたユーザーのみが起動処理を継続できるような方式を採った。あらかじめ設定したレート値を超えた場合、Akamai API Gatewayが事前定義されたエラーを返す。それを受け取ったアプリケーションは起動処理を停止するため、それ以降のAPI処理に伴うサーバーへの負荷が発生しなくなる。
「Akamai API Gatewayは、秒単位で非常に精度の高いAPIリクエストレートの制御を可能とする唯一無二のサービスだと考えています。この種の制御をCDNで行う場合、稼働するエッジサーバーごとにサーバーへの流量を定義する実装が普通です。この場合、最終的にサーバーが複数のエッジサーバーから受けとる総量で秒あたりの制御をすることが仕組み的に難しく、サーバーに想定以上の負荷がかかる可能性があります。Akamai API Gatewayは、Akamaiのエッジにリクエストを分散しながらも、エッジからサーバーが受け取る総量をベースに秒間リクエスト数を設定できます。さらに、詳細な検証の結果、そのレート制御の精度が検討していた他のソリューションと比較して抜きん出ていました。これならば、膨大な量の視聴者の流入があっても設定どおりの流量内に制限できると判断しました。Akamai API Gatewayによって、サーバーへの秒間接続数を有限にできると、事前にテストした状態でイベント開催中もサーバーサイドのインフラを構えられますし、予想外の対処やコストが発生することもなくなります。」と、AbemaTV 開発本部 エンジニアの辻純平氏は述べる。
辻氏は、本格的な稼働までの動作検証段階でも、技術コンサルタントエンジニアのサポートが役に立ったと振り返る。Web会議やチャットツールなどを活用しながら、細かな疑問にもすばやく的確な回答を得られて、スムーズに実装を完了することができたとのことだ。実際、Akamai API Gatewayの導入を決定してから、約1か月という短期間で実装を完了させた。
手厚い技術支援で高度な制御を実現、大人気の試合も安定配信
西尾氏は、大会期間中、Akamai API Gatewayは「期待通り完ぺきに稼働した」とする。もともとABEMAは余裕を持ったシステム構成を採り、万全の体制で大会開催に臨んでいた。とはいえ、人気の集中する日本チームの試合では、Akamai API Gatewayで設定した上限値を超え、レート制御が働く場面も何回かあった。それでも確実に流量制限が作動し、安定的な配信を持続することができた。西尾氏は「我々の高いレベルの要求に応えた高品質なサービスだと感じています。非常に安心して配信を行うことができました」と高く評価している。
また辻氏は、「Akamaiは世界中のさまざまな大規模イベントの配信をサポートしてきた豊富な経験があり、その超分散型アーキテクチャ上で実現される安定性やスケーラビリティは、他の類似サービスの追随を許しません。APIセキュリティの強化という面でも、非常に効果的な機能を提供しています。さらに、IaaSライクなクラウドサービスの提供を開始したことで、クラウドサーバーとエッジの融合が生みだすコンピューティングインフラの可能性にも期待しています。とはいえサービスや設定が柔軟すぎて、技術的なハードルの高みを感じることもあります。Akamaiは技術サポートも強力ですから、最大限に活用して今回のような手応えのある成果を得たいですね」と話す。
今後もAbemaTVは、“いつでもどこでも繋がる社会インフラ”としての 、ABEMAの価値をいっそう高めていきたい意向だ。主力のスポーツライブ配信のほか多様な番組をさらに強化し、多くの視聴者が楽しめるホットなコンテンツを継続的に提供していく計画だ。
「社会インフラであることを目指す私たちにとって、CDNやその他のさまざまなネットワーク技術が、より高品質に高度に進化していくことが重要です。Akamai API Gatewayをはじめとした各種サービスが、さらに使いやすく進化していくことを期待しています。またAkamaiには、インターネットサービスのための技術の発展をリードして、積極的に活用方法を提案してほしい、ABEMAのサービスを継続的に支援してほしいと願っています」と、西尾氏は期待を述べた。
About ABEMA:
「ABEMA」はテレビのイノベーションを目指し"新しい未来のテレビ"として展開する動画配信事業。登録は不要で、国内唯一の24 時間編成のニュース専門チャンネルをはじめ、オリジナルのドラマや恋愛番組、アニメ、スポーツなど、多彩なジャンルの約25チャンネルを24時間365日放送している。注目の新作映画、国内外の人気ドラマ、話題のアニメなど豊富なラインナップの作品や、様々な音楽や舞台のオンラインライブも展開。多様なデバイスで高品質な動画を楽しむことができる。