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エッジコンピューティングとは

エッジコンピューティングとは、ユーザーやデバイスに近い場所でデータをローカル処理する方法です。これにより、帯域幅が節約され、レイテンシーが低減されるため、ユーザーが期待する高速なデジタル体験を実現できます。

エッジとは何か

エッジは ATM のようなものです。どこにいても必ず近くに ATM があるため、当然のようにすばやく簡単に現金を引き出すことができます。ユーザーやデバイスに近い場所でデータが処理されるため、レイテンシーが低減され、どこからデータにアクセスしても、すばやくスムーズにアクセスできます。レイテンシーとは、Web サイトにアクセスしてからページの読み込みが終わるまでの時間、あるいはモバイルアプリをタップしてからその処理が完了するまでの時間を指します。これは通常、データを処理する場所とデータを保存する場所が物理的に離れているために発生します。プロセスがエッジに移動し、ユーザーの近くで処理されるようになれば、ほぼリアルタイムのデジタル体験になります。

「エッジ」という言葉は進化しており、エッジサーバー、ユーザーのコンピューター、または IoT デバイスを指すようになっています。データセンターの中心から離れた場所へと処理とデータを分散させて、ユーザーやデバイスに近い場所でデータを処理したり決定を下したりできるようにして、ユーザー体験を向上させます。

業界の専門家である Gartner 社の VP アナリスト、Bob Gill 氏は「The Edge Manifesto」でエッジの仕組みを次のように説明しています。「コンテンツ、コンピューティング、データセンターのリソースをネットワークのエッジに移し、ユーザーが集中している場所の近くに配置するようになっています。このように、従来の中央集中型データセンターモデルが拡張されているため、デジタルビジネスに求められるユーザー体験が向上します」。

エッジは、柔軟で大規模な分散型のサービス提供環境を構築するように設計されており、企業がそのサービスを利用する際に、レイテンシーが最小限に抑えられ、拡張性が最大化され、あらゆるプラットフォームに展開されたアプリケーションに対して一貫したセキュリティ対策が施されるようになっています。その結果、高速でシームレスなユーザー体験が生まれます。

エッジコンピューティングの仕組み

エッジコンピューティングは、ラボ付きの診察室のようなものです。診察し、試験し、そしてその結果を即座に得ることができます。エッジコンピューティングでは、データが収集、分析、処理される場所はエッジであり、それはまさに、ユーザーがオンラインでやり取りする場所そのものなのです。

エッジコンピューティングの最も基本的な考えは、データ、知見、意思決定を、その処理を行うもの(IoT デバイスやユーザーのコンピューターなど)の近くに置くことです。数千マイル離れたセントラルロケーションに頼るのとは対照的に、エッジは可能な限り「利用する側」の近くに存在します。物理的な世界とデジタルの世界をエッジという場所で相互作用させる手段と言えます。エッジコンピューティングは、このような相互作用をデータという形で行います。データは、意思決定やパターンの検索を行ったり、ストレージや分析アプリケーションに渡してより深く分析したりするのに使われます。最終的な目標は、実装の信頼性と拡張性を高くすることであり、データ、特にリアルタイムのデータでレイテンシーの問題が発生することを回避し、アプリケーションの目的や性能に影響が及ばないようにすることです。

エッジコンピューティングの用途

エッジコンピューティングは、私たちの身の回りで使用されており、今後も成長と拡大を続けていくでしょう。日常的なやり取りの中で、応答が早いのが当たり前だと思われているものがあります。たとえば、モバイルアプリの利用、オンラインショッピング、預金残高の確認、ストリーミング・メディアのほかに、照明やチャイム、自動車などの電気接続型の機器の操作、電車や飛行機の予約といったことです。このようなサービスには必ず、大規模なリアルタイムの情報処理が必要になります。これらはすべて、エッジコンピューティングを導入するどうかで、優れた体験にも、遅くてストレスの多い体験にもなり得る例です。

エッジコンピューティング自体は、決して新しいアイデアというわけでなく、誕生から何十年も経過しており、時代を先取りし過ぎたせいで十分に評価されていませんでした。株式市場での瞬時の取引、支店におけるサービスの最適化とローカライズはどちらとも、実際行われる現場にビジネスロジックを近づける成功例として長年の実績があります。最新のテクノロジーは、コネクテッドカーやその他の IoT デバイスの迅速な意思決定、5G によるネットワーク処理速度の向上など、エッジコンピューティングの力を活用する機会を増やします。

エッジサーバーとは

コンテンツ・デリバリー・ネットワーク(CDN)が誕生した 1990 年代には、ユーザーの近くに Web コンテンツや動画コンテンツを配置することで、より高速に配信できるようにするエッジサーバーが開発されました。これがエッジコンピューティング時代の幕開けです。ショッピングカートやリアルタイムのデータアグリゲーターなどのアプリケーションをホストした初の商用エッジ・コンピューティング・サービスが誕生したのです。

簡単に言えば、エッジサーバーは、ユーザーが Web アプリケーションなどからコンテンツやリソースにすぐにアクセスできるように、ネットワークの入口となるエッジという場所で処理を実行する、一種のデバイスです。

CDN とエッジコンピューティングは同じ?

「エッジ」の意味を拡大解釈すれば、CDN もエッジコンピューティングの一形態と考えられます。CDN は元来、キャッシュされたデータを保存するという目的のために、従来のサーバーをもとに構築されたものです。しかし、現在の世界では、CDN をすでに使用していて、CDN のベンダーが(CDN とのやり取りのために)コードの記述を許可しているのであれば、それはもはや CDN エッジコンピューティングです。エッジネットワークは、従来のサーバーからスマートフォンや IoT デバイスに至るまで、あらゆるデバイスで動作し、データを処理したり保存したりすることができます。

エッジとクラウドの違い

クラウドコンピューティング とエッジコンピューティングは、異なるテクノロジーです。両者は相反する性格を持っています。クラウドコンピューティングは時間の制約がないデータの処理に使用されますが、エッジコンピューティングは時間の制約を受ける情報の処理に使用されます。

エッジコンピューティングは、レイテンシーの低減という目的だけで使われているわけではなく、接続性が悪かったり、接続に制限が課されていたりする遠隔地で、ローカルストレージが必要な場合にもよく使用されます。

サーバーレスコンピューティングとは

サーバーレスコンピューティングは、エッジコンピューティングと呼ばれることもあり、区別が曖昧になっているかもしません。類似点はありますが、エッジコンピューティングは、動的なコンテンツの組み立て、セキュリティ保護、ボット管理などをエッジに移し、エンドユーザーのデバイスに近付けます。これにより、企業はこれらの機能をコンテンツ配信の一環として、設定、展開することができます。

これは、Functions as a Service(FaaS)とも呼ばれ、開発者が基盤となるインフラを管理・保守することなく、イベントドリブンのロジックとコンテキストデータを展開・実行できるようにするゼロ管理コンピューティング環境です。そういう意味では、サーバーレスも、開発者が実行されるコードにのみ関心を払う、別スタイルのクラウドコンピューティングと言えます。コードの実行方法や、パフォーマンスとスケーラビリティのニーズはクラウドベンダーによって自動的に管理されるため、開発者は OS やミドルウェアを管理する必要がありません。

サーバーレス環境は通常、集中型コンピューティングクラウドまたはエッジクラウド内に存在し、アプリケーションが実際に消費したリソースに基づく価格モデルを提供します。

サーバーレスの主な利点としては、インフラのメンテナンス作業を排除し、運用上の責任をクラウドまたはエッジのベンダーに移すことができること、オートスケール機能が備わっているため、事前に余分な容量を確保しておく必要がないことがあります。

サーバーレスコンピューティングを導入すると、開発者はさまざまな負担から解放されるため、デジタル体験の主要な機能に集中できるようになります。また、サーバーレス環境は、使用した分だけ料金を支払うようになっているため、拡張性、信頼性、コスト効率に優れています。 

従来のサーバーレス環境は、プログラミング言語のサポート、読み取り/書き込み用データストア、およびコードの管理、アクティベーション、監視を支援する開発者用ツールをコンピューティングフレームワークに提供するものでした。

これからのエッジコンピューティング

人とモノ、そしてその両方の体系が相互に作用することがますます増えていきます。つまり、ハードウェア、ソフトウェア、コードのそれぞれの階層で価値を発揮できるエッジ・コンピューティング・ソリューションを生み出す新しいチャンスとなります。 

一部の業界レポートによると、エンタープライズは 2024 年までにエッジコンピューティングに 2,500 億ドル近くを投資するだろうと言われています。この価値を得るためには、エッジを十分に理解していること、サービスの統合化と、他のエコシステムプロバイダーとの連携の両方がエッジプラットフォームで実現できること、そして、レイテンシーの低減とデジタル変革を進めるうえで一元化と分散化のうち、どちらに価値があるのかを企業が評価できることが求められます。

エッジコンピューティングの実装方法

エッジコンピューティングは、テーマが複雑になる傾向があり、捉えにくい側面があります。そこで、2 つの分かりやすい例をご紹介します。クラウドプラットフォームの課題に直面した企業の例と、クラウドコンピューティングとエッジコンピューティングで問題を解決した例です。

ジオロケーションの高速化

パーソナライズは現代のユーザー体験において重要な役割を担っています。地区レベルの在庫やセール情報を見せることができれば大きなメリットになりますが、必ずしも簡単ではありません。ジオロケーションにより、人気の高いある自動車市場の在庫と情報を調整して、市場価値の価格設定、評価、レビュー、販売情報を公開することができるようになりました。

簡単に聞こえるかもしれませんが、このデータを取得するために、Web アプリケーションを何度も呼び出さなくてはなりません。ユーザーがアプリにアクセスすると、ジオロケーションマイクロサービスによってアプリの表示内容がフィルタリングされます。マイクロサービスとは、個別に展開可能なモジュール式サービスという形でソフトウェアアプリケーションを開発する方法です。問題は、最新のデータを取得するための呼び出しによってレイテンシーが増加することでした。ジオロケーションマイクロサービスによって、ページの読み込みは 500 ミリ秒~2 秒遅くなりました。長い待ち時間ではなさそうに思えるかもしれませんが、多忙なスケジュールを抱え、スピードを求めている今日の消費者にとっては、時間がかかり過ぎです。そこで、マイクロサービスを、Cookie を使用してエッジでジオロケーションデータを注入するソリューションに移行することで、往復時間の 99% を節約できるようになりました。現在、マイクロサービスはジオロケーションデータを 20 ミリ秒で返しています。購入する自動車を探していて、コストと仕様を短時間で比較したいと考えている人にとって、情報提供の時間短縮は不可欠でした。

グローバルな接続

飛行機に搭乗したことがある人の大半は、次のような問題を経験したことがあると思います。フライトの予定時刻を確認します。航空会社のアプリをダウンロードして、通知を受け取ります。フライトトラッカーや空港の Web サイトで念のためチェックします。空港に到着したら、スクリーンでフライトと搭乗ゲートの情報を確認します。搭乗ゲートに着いたら、端末で最新情報を確認します。すると、それまでとは異なる情報が表示されていることが、ままあります。

航空会社は、重要なデータの送信と同期に関して多くの課題を抱えています。インターネットとネットワークの速度に常に一定というわけではないため、リアルタイムのデータ調整は困難です。フライト状況に関する情報が矛盾していると、乗客は混乱し、カスタマーサービスに多くの労力を割かなくてはなりません。より正確でタイムリーな情報を配信できれば、顧客満足度は向上し、コストも削減できます。

あるグローバル航空会社は、エッジ・コンピューティング・ソリューションでこの問題を解決しました。通常の Web アプリケーションではデータ同期の課題を解決できないことは明らかでした。同期するアプリケーションが多すぎるからです。また、Web アプリケーションは、スケジュールに従って(またはイベントに応じて)情報をリクエストして、最新の状態を維持します。例えば、スマートフォンのメールクライアントの設定を思い浮かべてください。メッセージ配信の設定にはプル型とプッシュ型があります。プル型は、スマートフォンのアプリに対して、メールサーバーに最新情報をリクエストするように指示します。プッシュ型は、メールサーバーに対して、ユーザーに情報を送信するように指示します。どれくらいの頻度で新しいメールを受信したいかに応じて、プッシュまたはプルのタイミングを設定します。フライト情報で問題となるのは、アプリケーションの数です。モバイルアプリ、空港のスクリーン、Web サイト、搭乗ゲートの端末は、それぞれ異なる間隔で、プル型の情報更新を行います。そのため、フライトの遅延もアプリケーションごとに異なるタイミングで表示されます。

この航空会社は、エッジ・コンピューティング・ソリューションを使用して、世界中のフライト情報を同期させました。その結果、3 つの主要なメリットが得られました。

  1. メッセージのサイズが小さくなり、より高速で信頼性の高い配信が可能
  2. 情報は既知のサブスクライバーにのみ送信されるため、安全性が向上
  3. フライト情報を表示するすべてのデバイスが、同時に情報を受信

このソリューションにより、信頼性の高い自動メッセージ配信と通知がリアルタイムで提供されるため、航空会社の顧客は、どのアクセスポイントでも一貫した情報を得られるようになり、時間を守れるようになりました。

エッジコンピューティングのビジネス価値

多くの企業は、エッジコンピューティングをいつ、どこで、どのように使えば具体的なニーズに応えることができるのか、まだ理解できていません。エッジコンピューティングとクラウドコンピューティングのどちらにするかは、どちらも実現可能な選択肢であるならば、コストが決定要因になります。コンピューティングの形態によっては、エッジが意味をなさないケースもあります。例えば、レイテンシーの低減の要件により、クラウドにコンピューティングを集中化できないようなケースです。

放送局はデジタルに移行するにあたって、加入者の好みを把握したうえで番組を編成し、視聴体験に万全を期す必要があります。番組を編成することは、非流動的なデータ(デバイスからデバイスへ、ネットワークからネットワークへと活発に動き回るのではなく、ハードドライブ、フラッシュドライブ、ラップトップに保存されているか、別の方法でアーカイブされているデータ)がなければ実質的には不可能です。加入者層の属性に応じて、どのようなコンテンツをどのように制作するのかを決めるために、さまざまな場所からデータを収集し、蓄積、処理する必要があります。逆に、このような加入者が、それぞれの地域でデバイスを使ってネットワーク経由で番組を視聴する際に、すぐに番組をストレスなく視聴できるようにするためには、リアルタイムの監視、処理、およびアクションが必要です。番組の価値は月単位、年単位で測るべきものですが、視聴者の体験という面で見ると、価値の有無はミリ秒単位で決まります。

同様に、小売企業の場合も、何千回にも及ぶインタラクションを通じて、顧客がオムニチャネルショッピング体験に何を望んでいるのかを把握したうえで、顧客のコンバージョンを図り、その生涯価値を最大化する店構えと販売内容を決めることが重要です。このような判断は、個人個人の行動では決まらず、またリアルタイムで決めることもできません。この場合にも、非流動的なデータが必要になります。そのデータに基づいて、買い物客のコホートやペルソナを作成することで、購入が促進されるような形で商品を提示し、宣伝できるようになります。そのような情報を組み立て、そのときの状況に適応させるには、買い物客の居場所が店舗なのかオンラインなのか、どのデバイスを使用しているのか、e コマースアプリケーションがある時点でどのような動きをしていたのかをベースにする必要がありますが、コンバージョン率を最大化するためには、リアルタイムのコンピューティングが欠かせません。

データが価値を発揮するタイミング、場所を理解することが重要です。企業は、クラウドとエッジがそれぞれの価値を発揮できる場所を評価し、その価値を獲得するのに適したインフラとアプリケーションを設計する必要があります。非流動的な状態のときに価値を持つデータをエッジで管理し、セキュリティ保護しようとすると、冗長性(集中型クラウドが克服すべき課題)が生じ、莫大なコストがかかります。エッジからクラウドにリアルタイムのハイパーローカルデータが送り返されると、価値を発揮できないばかりか、その代償も高く付きます。ラウンドトリップによりレイテンシーやエラーが発生し、ユーザー体験が低下するからです。

要点をまとめると、リアルタイムで変化するデータに基づいて行動を起こす必要がある場合には、エッジコンピューティングから始め、データを集約、処理、分析して価値を抽出できる、またはそうする必要がある場合には、クラウドコンピューティングから始めるとよい、ということです。

Akamai の業界をリードするエッジ・コンピューティング・ソリューションについて

Akamai のエッジ・コンピューティング・プラットフォームは、比類のない拡張性、信頼性、セキュリティを備えたアプリケーションやサービスを柔軟に構築、運用するのに役立ちます。

20 年以上にわたり、Akamai は企業が個別の成長ニーズや開発ニーズに合わせてエッジ・コンピューティング・ソリューションを開発できるよう支援してきました。世界最大かつ最も高度なエッジプラットフォームを擁し、135 か国、4,200 以上の拠点、1,400 以上のネットワークで、最高のサーバーレスコンピューティング、エッジアプリケーション、およびクラウド最適化を提供できる態勢を整えています。

エッジでのイノベーション

今回のレポート対象期間のページビューは EdgeWorkersを使用すれば、想像どおりのものが作れます。EdgeWorkers の機能により、開発チームはカスタマー体験に影響を与えるロジックを自由に構築できます。トラフィックルーティングから動的なコンテンツのアセンブリ、さらにその他のロジックまで、既存のツールセットやワークフロー内で実現できます。

EdgeWorkers と EdgeKV を使用することで、開発者は、世界中で 25 万台以上展開されているエッジサーバー上でマイクロサービスを作成し、展開することができます。開発チームがエッジでコードをアクティベートすると、データ、知見、ロジックがエンドユーザーの近くにプッシュされます。Akamai は、性能とスケーラビリティに優れた実装モデルを提供し、データやコンピューティングがデジタル体験の劣化をもたらすレイテンシー問題に阻害されないようにします。

Akamai の全エッジコンピューティングソリューションをご紹介