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HTTP/3 を使用し、高速で信頼性が高く安全な Web 体験を提供

Julio Chaves

執筆者

Julio Chaves

May 31, 2023

Julio Chaves

執筆者

Julio Chaves

ビデオゲームの熱狂的なファンでもある Julio Chaves は、製品マーケターとして手腕をふるっています。過去 3 年以上にわたり、製品のメッセージング、企業イベント、コミュニケーションに創造性を発揮してきました。サービスおよびサポートの製品マーケターとして、市場導入を支援する戦略に取り組んでおり、セキュリティサービスが重要であることを誰もが認識できるようにしています。

HTTP/3 は、Web パフォーマンスとセキュリティを大きく変革する力を秘めています。そして、 Akamai は HTTP/3 をコンテンツ配信業者の皆さまに追加料金なしでご提供できることを嬉しく思います

嬉しいお知らせです。HTTP/3 を Akamai のすべてのコンテンツ配信業者 のお客様が利用できるようになりました。これは、世界最大の HTTP/3 の展開です。 

HTTP/3 は、HyperText Transfer Protocol(HTTP)の最新版であり、 HTTP/1.1HTTP/2 のコンセプトを維持しながら、 QUIC プロトコルを Transmission Control Protocol(TCP) の代わりにトランスポート層で使用します。

長年の調査を経て、Internet Engineering Task Force(IETF)は HTTP/3 を正式に公開しました (2022 年 6 月)。コンテンツデリバリーのマーケットリーダーとして、Akamai は HTTP/3 の開発と仕様決定に積極的に関与し、85 社以上のお客様と 12 か月以上に及ぶベータテストを実施しました。 

Akamai は、毎日、いつでもどこでも、世界中の企業が世界中の人々の人生をより豊かにできるようするオープンスタンダードのサポートをインターネット全体で引き続きリードしています。 HTTP/3 は、コンテンツデリバリーの速度、セキュリティ、信頼性を向上させる上で、大きな前進です。 

変化への適応の加速:QUIC の進化

変化は当然のことであり、特に過去 30 年間、Akamai はその適応能力を絶えず試され続けてきました。新技術が登場するまでに数十年かかることもあったこれまでの世代とは異なり、 イノベーションのペースは飛躍的に加速しており、 これにインターネットが絡んでいることは言うまでもありません。ネットワークプロトコルも例外ではありません。HTTP/2 は 2015 年に標準化されましたが、 HTTP/3 の実現に向けた取り組みは 2018 年に開始されました。 

一体、わずか 3 年で何が変わったのでしょうか? 

答えは QUIC 

QUIC は、Google が 2012 年に設計し、2021 年に標準化した転送プロトコルです。TLS 1.3 と緊密に統合されたユーザー・データグラム・プロトコル(UDP)をベースに構築されています。Akamai の Principal Architect であり HTTP/3 RFC エディター である Mike Bishop は、以前に QUIC の起源に関する知見 と、QUIC が HTTP/3 の重要な柱となった経緯について記事を書きました。 

QUIC は、TCP のアップグレードバージョンに対するデバイスの互換性の問題など、TCP に関連する効率性の問題のほとんどに対処することを目指しています。UDP は、ほとんどのデバイスや小型の機能セットと互換性があるため、TCP よりもアジャイルです。QUIC は TLS 1.3 と統合されているため、安全な接続を確立するために必要なネットワーク・ラウンド・トリップの数が減少します。 

さらに、QUIC は、データストリーム処理の向上、プライバシー機能の強化、パケット損失の検知とリカバリーの改善を実現します。これは、HTTP レイヤーによって TCP を通じたストリームを処理する従来のアプローチとは対照的です。QUIC は、これらの機能をトランスポートレイヤーに移動することで、効率を向上させ、より優れたユーザー体験を実現できます(図 1)。 

HTTP/2 と HTTP/3 の間のハイレベルなプロトコルスタック比較 図 1:HTTP/2 と HTTP/3 の間のハイレベルなプロトコルスタック比較

HTTP/3:高速、安全、安心を実現

HTTP/3 はデータ転送時に QUIC の機能を継承し、パフォーマンス、プライバシー、信頼性、互換性に関する TCP の制約を排除します。

パフォーマンスの改善

API コール、ストリーミングメディア、Web ページなどの現代的なオンライン体験は、読み込み時間の短縮とレイテンシーの低減によって、大きな恩恵を受けます。HTTP/3 はより高速で短時間の接続セットアップをサポートするため、Web サーバーとクライアント間のラウンドトリップの回数が減少します。 

TCP では、接続をセットアップするために 3 ウェイハンドシェイクが個別に必要であり、レイテンシーが増加してしまいます。一方、QUIC は TLS 1.3 との緊密な統合によって、転送と暗号化のハンドシェイクをまとめて、1 回のラウンドトリップにします。これにより、接続のセットアップに必要な時間が大幅に短縮されます(図 2)。

HTTP/3 ではラウンドトリップ数が減少 図 2:HTTP/3 ではラウンドトリップ数が減少

お客様事例:大手メディア

ここからは、ある大手メディアのお客様の事例を紹介します。そのお客様は、2023 年 4 月 19 日に、ラテンアメリカ諸国で欧州サッカーイベントのライブストリーミングを行っている中で、HTTP/3 および HTTP/2 トラフィックを提供しました(図 3)。この 2 つのバージョンのプロトコル間のトラフィック量はほぼ 1 対 1 であり、重要な指標であるイベント中のピークトラフィックは 4.16 TB/s でした。

2023 年 4 月 19 日のライブ・ストリーミング・イベント中のピークトラフィック(TB/s) 図 3:2023 年 4 月 19 日のライブ・ストリーミング・イベント中のピークトラフィックは 4.16 TB/s でした

全体として、HTTP/3 は HTTP/2 よりもパフォーマンスが優れており、このお客様はターンアラウンド時間(TAT)の短縮とスループットの向上を実現しました。TAT という指標は、Akamai エッジサーバーが HTTP リクエストの最初のバイトを受信してから、ソケットに応答の最初のバイトを送信するまでの時間(ミリ秒)を表します。 

サーバー側の効率性を測定するものであり、HTTP 実装のパフォーマンスを評価するためだけでなく、エンドツーエンドのレイテンシーを改善するためにも重要です。スループットとは、プロトコルを使用して一定時間内に送受信できるデータ量を指します。

たとえば、最初のしきい値では、HTTP/3 リクエストの 96.2% で TAT の値は 25 ミリ秒未満であり、HTTP/2 でこの基準を満たすリクエストは 89.7% だけです。ここでは 6.5% の改善が見られたことになります。また、HTTP/3 リクエストの 100% で TAT が 0.5 秒未満だったことにもご注目ください(表 1)。

2023 年 4 月 19 日のライブストリーム中の HTTP/3 と HTTP/2 の TAT 比較 表 1.2023 年 4 月 19 日のライブストリーム中の HTTP/3 と HTTP/2 の TAT 比較

スループットに関して、特に低いレートでは、HTTP/3 があらゆるレベルで HTTP/2 を上回りました。最初のしきい値では、HTTP/3 は HTTP/2 よりも大幅に優れており、1 Mbps を超えた接続の割合がそれぞれ 86.2% と 73.5% で、12.7%の改善を示しています。スループットレベルの上昇に伴い、HTTP/3 と HTTP/2 の間のギャップが狭まりますが、HTTP/3 はすべてのしきい値レベルで HTTP/2 を常に上回りました(表 2)。

2023 年 4 月 19 日のライブストリーム中の HTTP/3 と HTTP/2 のスループット比較 表 2.2023 年 4 月 19 日のライブストリーム中の HTTP/3 と HTTP/2 のスループット比較

ただし、パフォーマンスは、エンドユーザーの場所、帯域幅、提供されるコンテンツタイプなどのさまざまな要因によって常に影響を受けることに注意してください。HTTP/2 は依然として HTTP/1.x よりもパフォーマンスが大幅に向上していますが、HTTP/3 の利点を軽視することはできません。

Head-of-Line Blockingの減少

HTTP/3 でパフォーマンスが向上するもう 1 つの理由は、Head-of-Line Blockingが減少するためです。HTTP/2 は TCP に依存しているため、遅延または損失した TCP パケットが 1 つでもあると、リカバリーされるまで、その背後にある他のすべてのパケットがスタックする可能性があります。これは Web ページにとって問題になる可能性があります。なぜなら、たとえば CSS データを送信するパケットを 1 つ損失したとしても、JavaScript(JS)コードを含む後続のパケットに影響が生じてはならないからです。これは QUIC によって修正されます。QUIC はパケット損失をストリーム単位で追跡し(CSS リソースと JS リソースを区別)、実際に損失または中断が発生したストリームだけを遅延させるためです。 

Head-of-Line Blocking について、詳しくは こちらの詳細な記事 をご覧ください。Akamai Senior Technical Solutions Architect であり IETF の寄稿者でもある Robin Marx が説明しています。また、Marx は HTTP/3 のその他のパフォーマンス改善についても 素晴らしい記事 を書いていますので、そちらもご参照ください。

信頼性の向上を目指した設計

HTTP/3 を使用する主な利点の 1 つは、QUIC が TCP よりもネットワークの輻輳とパケット損失に対してより堅牢に設計されていることです。これは、QUIC には、パケットを効率性と信頼性の高い方法で配信できるようにする、新しい損失回復メカニズムと輻輳制御メカニズムが含まれているためです。 

また、HTTP/3 では、より優れた優先順位付けスキームの使用によって、信頼性も向上します。重要なデータを重要度の低いデータよりも高い優先度で送信できるようにするためには、このシステムが必要です。 HTTP/2 の複雑な優先順位付けツリー は、わかりやすく実装しやすい、単純な優先度レベルを使用した簡単なセットアップに置き換えられました。これにより、ネットワークが輻輳した状況でも、極めて重要なデータは確実に最初に配信できるようになります。

プライバシーとセキュリティの強化

HTTP/3 には TLS 1.3 やトランスポートレベルのパケット暗号化などのセキュリティ強化機能が含まれており、潜在的なセキュリティ上の脅威から顧客データや機密情報をより適切に保護できます。また、QUIC には TCP と UDP から得られた多くの教訓が取り入れられており、多くの既知のサービス妨害攻撃に対する保護と緩和が組み込まれています。ほとんどのトランスポートレベルのメタデータ(パケット番号など)を暗号化すると、攻撃者が接続プロパティを推測したり操作したりするのが難しくなります。

HTTP/3 の未来

Akamai は、HTTP/3 は今後も進化し、Web の未来を形作っていくと考えており、HTTP/3 によって Akamai とデジタルコンテンツの関係がどのように変わるのかを楽しみにしています。いつも通り、Akamai は可能な限り最高のパフォーマンスをお客様に提供することに注力しており、HTTP/3 サービスの拡張も意欲的に行っていきたいと考えています。

さらに、Akamai は IETF や World Wide Web Consortium などの標準化団体と、HTTP/3 関連で引き続き協力します。Akamai のエキスパートは、WebTransport、Alt-SvcB、HTTPS DNS レコード、Media Over QUIC などの新しい標準に貢献しています。今後はさらに面白い時代がやってきます。

追加料金なしで HTTP/3 を活用

HTTP/3 は、Web パフォーマンスとセキュリティを大きく変革する力を秘めています。そして、Akamai は HTTP/3 を 追加料金なしでコンテンツ配信業者の皆さまにご提供できることを嬉しく思います。HTTP/3 は、QUIC を使用することで、より高速で信頼性が高く安全な Web 体験をユーザーに提供します。

今すぐ始めましょう。配信プロパティで HTTP/3 を活用するためには、 こちらの文書 のガイダンスに従うか、 Akamai のサポートチームへ問い合わせ いただき、サポートをお求めください。

この記事の執筆を手伝ってくれた Robin Marx と Rafal Myszka に感謝します。



Julio Chaves

執筆者

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May 31, 2023

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ビデオゲームの熱狂的なファンでもある Julio Chaves は、製品マーケターとして手腕をふるっています。過去 3 年以上にわたり、製品のメッセージング、企業イベント、コミュニケーションに創造性を発揮してきました。サービスおよびサポートの製品マーケターとして、市場導入を支援する戦略に取り組んでおり、セキュリティサービスが重要であることを誰もが認識できるようにしています。